青いバラ 林すくも
青いバラを持ってきたら、と彼女は言った。
それはホンのいたずら心と、彼を傷つけまいとする、彼女の優しさだった。
旅に出る、と置手紙を残して彼は姿を消した。
異国の地で、がけから落ちたと風の噂が聞こえた。
彼は魔術師に助けられ、九死に一生を得た。
魔術師の手伝いをしながら、彼は魔術を学んだ。
そして青いバラをつくった。
彼は十年前と同じ姿で現れた。
そのバラはたとえ、バラの匂い、形をしていても本トのバラではない、と彼女は言った。
彼は悲しげにほほえんで、彼女の前には二度と現れなかった。
彼の体はほとんどが機械だ、と風の噂が聞こえた。